そんな不名誉なレッテルを貼られたのは、いわゆる「ボーンヘッド」を繰り返したためだ。プレー中、集中力を途切れさせないために、常に周りの選手が怒鳴りつける必要があるほどだった。中でも昨年の一塁カバーを忘れた事件は語り草になっている。
三振振り逃げの状況で空振りした打者が手を滑らせ、バットは一塁手の前へ転がった。ここで一塁手のラローシュは捕手からの送球を待たなければならないのに、なんと、バットを拾いに行ってしまったのだ。もちろん打者走者は誰もいない一塁でセーフとなってしまった。
「飛んでくるバットを見た瞬間に試合の状況を一切忘れてしまった」からだった。
と、信じがたいボーンヘッドを繰り返してきたラローシュだが、実はその原因は「ADD(注意欠損障害)」を患ってきたことにあった。この病気、子供では「ADHD(注意欠損多動障害)」と呼ばれることが多いが、米国では小児の5%が薬剤治療を受けていると言われるほど、「ありふれた」病気である(薬で学校の成績が良くなるケースが多いので、本当は必要ないのに親が治療を要求する傾向が強い)。
ラローシュは、今年の5月に、またとんでもない信じられないプレーをしてしまった。それもあって試合は負け、ファンからの激しい罵倒を浴び、監督の怒りにも触れた。これらがよほどこたえたのか、ラローシュはついに薬剤治療を受ける決心をしたのだった。
ラローシュの病気は子供のころからのものなのだが、薬が合わないという理由で今まで治療を受けていなかったのだ。ところが今回は、幸い数年前に認可されたばかりの新薬コンサータが効果をあげ、集中力が生まれ、ボーンヘッド・プレイは消えた。
そればかりか打撃まで好調になり、打撃の総合的指標OPS(出塁率と長打率の和)が、オールスター前はリーグ60位だったのが、オールスター後はリーグ6位に急上昇する効果まであったのだ。この新薬コンサータは、厳密に言うと禁止薬物なのだとか。しかし大リーグ機構からは治療目的の使用ということで事前許可を得られている。(今のところオリンピックなどではドーピングになるらしいデス)
世の中には、ラローシュと同じ病気なのに、本人も周りも気づいていないケースってあるのでしょうか。もしあるとしたら、真剣に取り組んでいるのにもかかわらず初歩的なミスを連発してしまい、周囲からは「たるんでいる」とか「やる気が無い」と誤解され、本人も自分を無能だと勘違いしている可能性もありますね。治療によって道が開けるかもしれません。
