渡辺謙主役の映画「明日の記憶」を観てから、周りの景色が、なんとなく秋色に見えてきてしまっている私です。空想の出来事ではなく、現実に自分や身近に起こりうる話だからかもしれません。
49歳にして若年性アルツハイマーに罹ってしまった広告代理店に勤める主人公と、会社の人たち、そして何よりも樋口可南子演じるところの妻。発病したことによる人間関係の変化。病気を受け入れられないところから始まるさまざまな苦悩と衝突。
静かな愛情、特に際立つのが、妻が夫の支えとなろうとする、けなげで強い愛情が、最初から最後まで救いとなっている。
また、山奥の自然に囲まれたシーンも忘れられない。それまで主人公が生活していた、大都会の1分を争う競争社会と、ゆるやかに時が流れる静かな山奥とが極めて対照的だった。そこで会った少々痴呆の気のある陶芸の師匠(大滝秀治)が、「人は俺をボケていると言うが、ボケたかどうかは自分で決めるんだ。生きていればいいんだ」というようなことを言う。
少し前に話したことは忘れても、師匠にとって何の問題も無いのだ。もう会社勤めは出来なくても、その人の人間としての価値は変わらない。時計やスケジュールを気にしなくても良い、美しい自然の中で、主人公は何を思ったのだろう。
2007年01月29日
2007年01月26日
捏・でつ・ねつ
先日、捏造問題について書きながら、この「捏」という漢字がなんとなく気になっていた。この「捏」とはなんだろう、と。ただ捏造問題そのものに関心がいってしまい、その疑問を脇に置いたままにしていたら、今朝の読売新聞の「日本語 日めくり」という小さなコラムに解説があった。
「捏」は手でこねる意。手偏の右の部分は「ねばる土」、あるいは、ろくろで土器の形を整えるのを指すなどの説がある―とのこと。形だけ似たものをこしらえることだそうだ。漢音はデツで、そこからできた動詞が「でっちあげる」。なるほどねえ。
デツゾウを、ネツゾウと読むのは、慣用読みなんだとか。確かに、デツゾウは言いにくいかも。それでいて「でっちあげる」は、「ねっちあげる」より言いやすい。知らぬ間にそんな風に使い分けていたから、私の頭の中では、繋がっていなかったんだ。
芥川龍之介「戯作三昧」の中では、「小手先の器用や生噛りの学問で、捏(でっ)ちあげた」などと漢字で表記してあるそうだ。そういう作品を読んでいたら、私も気づいていたかもしれない。いや、気づかなかったかな。
「捏」は手でこねる意。手偏の右の部分は「ねばる土」、あるいは、ろくろで土器の形を整えるのを指すなどの説がある―とのこと。形だけ似たものをこしらえることだそうだ。漢音はデツで、そこからできた動詞が「でっちあげる」。なるほどねえ。
デツゾウを、ネツゾウと読むのは、慣用読みなんだとか。確かに、デツゾウは言いにくいかも。それでいて「でっちあげる」は、「ねっちあげる」より言いやすい。知らぬ間にそんな風に使い分けていたから、私の頭の中では、繋がっていなかったんだ。
芥川龍之介「戯作三昧」の中では、「小手先の器用や生噛りの学問で、捏(でっ)ちあげた」などと漢字で表記してあるそうだ。そういう作品を読んでいたら、私も気づいていたかもしれない。いや、気づかなかったかな。
2007年01月24日
うだつ
一昨日のこと、岐阜新聞WEBの「うだつ・土蔵が延焼食い止める 高山の火災」(2007年1月22日(月)08:44)という見出しが目に止まった。
とのこと。
という説明もあった。そういう壁のことなのかぁ。写真はちょっとわかりにくいなあ。
そこの家の人は「うだつは祖父が50年ほど前に設けた。出火当時は家族5人がいたが、無事に逃げることができた。消防の方の迅速な消火のおかげで、家には水も入っていない」と話していたそうだ。
めでたしめでたし、ご先祖様のお蔭だね、と思ったけれど、あとになって、何となくすっきりしない。確かどこかで「うだつが上がらない」の語源を教えてもらったことがあったはず。記憶力が悪いので、内容は思い出せないけれど、こういう壁ではなかったような・・・・・・。
ネット(三省堂「大辞林 第二版」)で探すことにした。するとこうあった。
ということで(1)と(2)があるようなので、次に「うだち」の説明を見てみる。
思い出した。(1)の柱の方を聞いたことがあったんだ。それと(2)の壁をさすこともあるのかあ。あ〜すっきりした。
高山市名田町で20日深夜に発生し商店など4棟を焼いた火災は、商店街に並ぶ「うだつ」と土蔵のある民家で延焼が止まった。21日に高山署などによる現場検証を見守った市民は、猛火を食い止めたうだつや土壁の効果を見直していた。
とのこと。
うだつは、屋根の両端を一段高くして、火災の延焼を防ぐために設けられた防火壁。設置には費用が掛かることから、うだつを造る家は裕福だった。このため「うだつが上がらない」の語源になっている。
という説明もあった。そういう壁のことなのかぁ。写真はちょっとわかりにくいなあ。
そこの家の人は「うだつは祖父が50年ほど前に設けた。出火当時は家族5人がいたが、無事に逃げることができた。消防の方の迅速な消火のおかげで、家には水も入っていない」と話していたそうだ。
めでたしめでたし、ご先祖様のお蔭だね、と思ったけれど、あとになって、何となくすっきりしない。確かどこかで「うだつが上がらない」の語源を教えてもらったことがあったはず。記憶力が悪いので、内容は思い出せないけれど、こういう壁ではなかったような・・・・・・。
ネット(三省堂「大辞林 第二版」)で探すことにした。するとこうあった。
〔「うだち」の転〕「うだち」に同じ。
――が上がらない
出世したり、金銭に恵まれたりしない。よい境遇になれない。〔家を建て、棟上げすることを「(1)があがる」といったことから。また、(うだち)(2)が金持ちでなければ作れなかったことからとも〕
ということで(1)と(2)があるようなので、次に「うだち」の説明を見てみる。
(1)梁(はり)の上に立てて棟木(むなぎ)を支える短い柱・つか。うだつ。
(2)民家の両妻に屋根より一段高く設けた小屋根つきの土壁。また、これにつけた袖壁をもいう。家の格を示し、装飾と防火を兼ねる。
思い出した。(1)の柱の方を聞いたことがあったんだ。それと(2)の壁をさすこともあるのかあ。あ〜すっきりした。
2007年01月22日
江戸を語る人
堀井憲一郎さんは、去年の11月に「第一回 江戸文化歴史検定」を受けて、2級(今回は1級は無し)に合格したとのこと。1万人以上も受検したそうだ。「ホリイのずんずん調査」【週刊文春 2007年1月23日号】に、そのときの問題がいくつかあって、解いてみるとなかなか面白かったので、一部をご紹介。
楽しそうなので、サイト「江戸文化歴史検定」を見つけました。そこにも問題例が載っていたので、また一部ご紹介。
出題順に、答えはこうなるそうです。
(は)胴上げ
(ろ)握り寿司
(ろ)八百屋お七
(ウ)銭形平次
(イ)下総国
(エ)イノシシ
何年か前まで、NHKの番組で「コメディー お江戸でござる」というのがあって、漫画家であり江戸風俗研究家の杉浦日向子さんが、いつも楽しそうに江戸時代のことを解説してくださったのを思い出した。まるで実際に江戸時代を体験したきたかのように、いかに当時の暮らしに知恵があったか、人との繋がりがどうであったか、などを語ってらしたのだ。今もお元気だったら、この検定でも、楽しい問題を作ってくださっただろうに、と、つい考えてしまった。
●江戸市中の商家などでは、年末の大掃除「煤払い」のあと、あることをしていました。それは次のどれでしょう。【2級 第12問】
(い)豆まき (ろ)万歳三唱 (は)胴上げ (に)寒中水泳
●西洋文化にも関心が高かった水戸黄門こと徳川光圀。さまざまなものを口にした記憶がありますが、次のうち、光圀が口にしたことのないのはどれでしょう。【2級 第54問】
(い)ラーメン (ろ)握り寿司 (は)餃子 (に)納豆
●天保二年(1682年)十二月の火事で避難先の寺小姓と恋仲になり、再びその寺小姓に会いたい一心で放火し、犯人として処刑されたとされる女性は誰でしょう。【3級 第6問】
(い)魚屋お六 (ろ)八百屋お七 (は)薬屋お八 (に)居酒屋お千
楽しそうなので、サイト「江戸文化歴史検定」を見つけました。そこにも問題例が載っていたので、また一部ご紹介。
●いずれも映画や芝居、テレビドラマ、時代小説などで有名な人物ですが、実在していなかった架空の人物は次のうち誰でしょう?
(ア)長谷川平蔵 (イ)遠山金四郎 (ウ)銭形平次 (エ)鼠小僧次郎吉
●明暦の大火(1657年)の後、両国橋が起工され寛文元年(1661)に竣工しました。両国橋という名前は、二つの国を結んだために付けられた名前ですが、ではこの橋が結んだ二つの国とは、武蔵の国とどこの国でしょう?
(ア)上総国 (イ)下総国 (ウ)常陸国 (エ)相模国
●江戸時代の食べ物屋に掛かっていた看板で「山くじら」とは、何の肉をいうのでしょうか?
(ア)ウシ (イ)ウマ (ウ)ブタ (エ)イノシシ
出題順に、答えはこうなるそうです。
(は)胴上げ
(ろ)握り寿司
(ろ)八百屋お七
(ウ)銭形平次
(イ)下総国
(エ)イノシシ
何年か前まで、NHKの番組で「コメディー お江戸でござる」というのがあって、漫画家であり江戸風俗研究家の杉浦日向子さんが、いつも楽しそうに江戸時代のことを解説してくださったのを思い出した。まるで実際に江戸時代を体験したきたかのように、いかに当時の暮らしに知恵があったか、人との繋がりがどうであったか、などを語ってらしたのだ。今もお元気だったら、この検定でも、楽しい問題を作ってくださっただろうに、と、つい考えてしまった。
2007年01月21日
納豆はおいしいよ
フジテレビの番組「発掘!あるある大辞典2」で捏造(ねつぞう)が発覚した。このところスーパーの納豆売り場が品薄になり、我が家のように昔から納豆が好きで、毎朝欠かさず食べているものにとって、はなはだ迷惑な現象だった。
でも、納豆を好きでもない人たちが、ダイエットの為だけにそう長期間朝晩食べ続けられるわけがなく、「すぐに元のようになるんじゃないの」などと期待をこめて話していた。それがまさかこんな展開になろうとは。
安易なダイエット話にすぐ飛びつく消費者を笑ったり責めるのも一理あるけれど、今回の捏造の悪質さは、それとは別の問題。このニュースを聞いて、「発掘!あるある大辞典2」の視聴者は、こう思ったに違いない。「だったら、今まで放送したものも、みんな嘘のデータだったかもしれない」と。
つまり、信用とはそういうもので、1つ信じられなくなったら、すべて疑わしくなってしまう。情報番組は、信用されなくなったらおしまい。この番組だけでなく、他の健康番組にも影響するだろう。いや、ニュース番組でも同様かもしれない。それだけ今回の問題は重いことなのだ。
ともあれ今日からは、また以前のように納豆たちはお店の棚に並ぶだろう。納豆ちゃん、今まで通り毎朝食べるからね。だって納豆に罪はないんだもの。
でも、納豆を好きでもない人たちが、ダイエットの為だけにそう長期間朝晩食べ続けられるわけがなく、「すぐに元のようになるんじゃないの」などと期待をこめて話していた。それがまさかこんな展開になろうとは。
安易なダイエット話にすぐ飛びつく消費者を笑ったり責めるのも一理あるけれど、今回の捏造の悪質さは、それとは別の問題。このニュースを聞いて、「発掘!あるある大辞典2」の視聴者は、こう思ったに違いない。「だったら、今まで放送したものも、みんな嘘のデータだったかもしれない」と。
つまり、信用とはそういうもので、1つ信じられなくなったら、すべて疑わしくなってしまう。情報番組は、信用されなくなったらおしまい。この番組だけでなく、他の健康番組にも影響するだろう。いや、ニュース番組でも同様かもしれない。それだけ今回の問題は重いことなのだ。
ともあれ今日からは、また以前のように納豆たちはお店の棚に並ぶだろう。納豆ちゃん、今まで通り毎朝食べるからね。だって納豆に罪はないんだもの。
2007年01月19日
IC免許証になったら
私の住んでいる埼玉県では、今年から発行される運転免許証にはICチップが内蔵されることになった。現在導入されているのは東京都と4県だけだが、2年以内には全国展開されるということで、今後徐々に免許証がIC化されていくらしい。ただ、IC化と言われてもよくわからないので、たいして関心もないままだった。
そんなとき、渡辺敏史さんの「カーなべ」【週刊文春 2007年1月25日号】に、渡辺さん特有のくだけた調子でIC化について書かれてあるのを読んで、少し分かってきた。まず免許証をIC化する理由。
そうですかあ。でも、聞き捨てならないのが、次の文。
えっ? 2つの暗証番号? どういうことかいな? 埼玉県警のサイトを見てみると、こうなっていました。
暗証番号を忘れたら、本人が直接免許証を持って、警察の免許窓口に行って問い合わせるらしい。どうしても忘れそうな気がする。
そんなとき、渡辺敏史さんの「カーなべ」【週刊文春 2007年1月25日号】に、渡辺さん特有のくだけた調子でIC化について書かれてあるのを読んで、少し分かってきた。まず免許証をIC化する理由。
免許証をICカード化することになった決定打は、そこらのパソコン一式で見破りにくい偽造免許証が出来るようになり、銀行口座や携帯電話の架空名義契約にそれが身分証明として使われるようになっちゃったから……ということのようだ。要するに振り込め詐欺の嫁入り道具みたいなものを根絶やしにするという狙いがあるのだろう。
そうですかあ。でも、聞き捨てならないのが、次の文。
むしろ僕にしてみれば、今後免許を持つにあたって2つの暗証番号を記憶しなければならないことの方が面倒くさい。1つは免許の基本情報、1つは顔写真と本籍情報をICチップ内から引き出すためのそれを、呑気に生まれ年と誕生日なんかに設定しようもんなら、それこそ元の木阿弥だ。
えっ? 2つの暗証番号? どういうことかいな? 埼玉県警のサイトを見てみると、こうなっていました。
○ IC免許証には暗証番号が必要になります
◎ 申請時に暗証番号を設定していただきます。
IC免許証は、ICチップに免許情報を登録しますが、登録した情報を保護するなどのために暗証番号を設定します。暗証番号は、申請時に自分で定めていただきます。
◎ 暗証番号は4桁の数字を2組定めますので、あらかじめ考えておいてください。
暗証番号は、免許証を身分証明書として利用する場合などに、相手方(金融機関など)が、ICチップに登録された内容を確認するため、暗証番号の入力を求められることがあると思われますが、その際、最初の4桁の数字で本籍・顔写真以外の免許情報が、引き続き残りの4桁の数字を入力すると本籍・顔写真が確認できます。
(注) 暗証番号はキャッシュカードやクレジットカードの暗証番号とは異なるものとなるように設定してください。
暗証番号を忘れたら、本人が直接免許証を持って、警察の免許窓口に行って問い合わせるらしい。どうしても忘れそうな気がする。
2007年01月17日
松坂へのアドバイス
ボストン・グローブ紙に、ダン・ショーネッシーというコラムニストがいる。李啓充さんの「大リーグファン養成コラム」【週刊文春 2007年1月18日号】によれば、なかなか面白い人物のようだ。
そのショーネッシーが、12月14日のコラムで、レッドソックスに入団した松坂大輔に対し、「友好的助言」を書いたそうだ。中には半ば冗談めかしたものもあるが、その中で、李啓充さんがもっとも大切だというのが次のくだり。
ジミー基金については、李啓充さんのこのコラムで何度か取り上げられ、当ブログでも紹介したことがありました。→ 「スマートな募金活動」
小児癌研究と患者を支援する「ジミー基金」とレッドソックスは、密接な関係にある。それらの支援は、選手が励ます側にいるにもかかわらず、実は選手自身の人生観や野球観までも変わることが多いのだそうだ。
ショーネッシーの娘ケイトも、8歳で白血病になったとき、ジミー基金によって助けられた。選手だけでなく、元選手もこの支援に参加しているそうで、彼女を情熱的に励ましたのが、テッド・ウィリアムズだった。その後ケイトは完治し、今は大学のソフトボールの選手だという。
李啓充さんのこのコラムを読むたびに、アメリカの選手は、日本よりもっと社会的な行為を求められているのを感じる。ただ野球で好成績を残せば良いというわけではない。松坂には、そういった日本との違いを、周囲の人たちが早く教えてあげて欲しい。ショーネッシーが書いたアドバイスについて、李さんはこう言っている。
読んでみて損は無さそう。
ショーネッシーは、ユーモアたっぷりに選手をからかうコラムで地元読者の人気も高いが、ベストセラー『バンビーノの呪い』を著し、「ベーブ・ルースの呪い」を世界に知らしめた功績でも知られている。
そのショーネッシーが、12月14日のコラムで、レッドソックスに入団した松坂大輔に対し、「友好的助言」を書いたそうだ。中には半ば冗談めかしたものもあるが、その中で、李啓充さんがもっとも大切だというのが次のくだり。
「誰かが『ジミー基金』と言うのを聞いたら、後について行きなさい。そして、頼まれたことは何でもするのです。計り知れないほどの大きな報いが得られます」
ジミー基金については、李啓充さんのこのコラムで何度か取り上げられ、当ブログでも紹介したことがありました。→ 「スマートな募金活動」
小児癌研究と患者を支援する「ジミー基金」とレッドソックスは、密接な関係にある。それらの支援は、選手が励ます側にいるにもかかわらず、実は選手自身の人生観や野球観までも変わることが多いのだそうだ。
ショーネッシーの娘ケイトも、8歳で白血病になったとき、ジミー基金によって助けられた。選手だけでなく、元選手もこの支援に参加しているそうで、彼女を情熱的に励ましたのが、テッド・ウィリアムズだった。その後ケイトは完治し、今は大学のソフトボールの選手だという。
李啓充さんのこのコラムを読むたびに、アメリカの選手は、日本よりもっと社会的な行為を求められているのを感じる。ただ野球で好成績を残せば良いというわけではない。松坂には、そういった日本との違いを、周囲の人たちが早く教えてあげて欲しい。ショーネッシーが書いたアドバイスについて、李さんはこう言っている。
長年熱心にチームをフォロウしてきた者にしか書けない「選手心得」となっているので、松坂には一読することを勧めたい(私の翻訳でよければいつでも進呈する)。
読んでみて損は無さそう。
2007年01月15日
今さら名前は聞けません
土屋賢二先生の「ツチヤの口車」【週刊文春 2007年1月18日号】を読んで、これと似たような話はどこにもありそうだと思った。
ツチヤ先生が最近通っている武術の道場でのエピソード。稽古仲間に渡部さんという人がいる。ところが、彼といつも仲良く稽古をしている折笠さんに渡部さんの苗字の読み方を尋ねると、<わたなべ>か<わたべ>なのか知らないと言う。
8年間も一緒に居て、今さら聞けない、のだそうだ。名前を呼ぶときは、<わた>と<べ>の間に微妙な間を置く、という苦肉の策で乗り切っている。そうと知ったツチヤ先生は、道場生が集まっているとき、渡部さんに尋ねた。
長年の付き合いなのに、道場の先生を含めて誰も知らなかった―。渡部さん、ショック!
本当に名前の読み方は難しい。名前を間違っては失礼だと思うので、余計にこんなことが起こるのだ。それにしてもツチヤ先生は、ずいぶんと大胆な性格だ。その調子なら、折笠さんのような苦労はしなくて済むだろうけど。
自分のときはダメなのか。
ツチヤ先生が最近通っている武術の道場でのエピソード。稽古仲間に渡部さんという人がいる。ところが、彼といつも仲良く稽古をしている折笠さんに渡部さんの苗字の読み方を尋ねると、<わたなべ>か<わたべ>なのか知らないと言う。
8年間も一緒に居て、今さら聞けない、のだそうだ。名前を呼ぶときは、<わた>と<べ>の間に微妙な間を置く、という苦肉の策で乗り切っている。そうと知ったツチヤ先生は、道場生が集まっているとき、渡部さんに尋ねた。
「折笠君は君の名前の読み方を知らないんだよ。彼は死ぬまで<わた*べ>とあいまいな発音を続けるしかないと言うんだ。失礼だろう? 何と読むの?」
彼が「わたなべです」と答えると、その場にいた者が口々に「<わたりべ>だと思っていた」「本当は<わたぶー>だろう?」などと言った(わたしは人名だから「でぶ」という読み方ありうると思っていた)ため、道場の中の全員が正確な読み方を知らなかったことが判明した。
長年の付き合いなのに、道場の先生を含めて誰も知らなかった―。渡部さん、ショック!
本当に名前の読み方は難しい。名前を間違っては失礼だと思うので、余計にこんなことが起こるのだ。それにしてもツチヤ先生は、ずいぶんと大胆な性格だ。その調子なら、折笠さんのような苦労はしなくて済むだろうけど。
そう言えば、わたしは折笠氏を<お*かさ>と呼んでいるが、正しくはどう読むのだろうか。
自分のときはダメなのか。
2007年01月12日
イエローリンパ、フローイング
海外旅行中にケガをしたり病気になったりすると、さぞかし心細く大変だろうと思う。映画監督・脚本家である大宮エリーさんが、そんな体験を「生きるコント」【週刊文春 2007年1月18日号】に書いている。
何年前のことか、ある年の始めに、(どうやら一人で)オーストラリアのユースホステルに宿泊したらしい。鉄パイプの二段ベッドの上段に寝た。床はコンクリート。四人部屋という相部屋なので、警戒してベッドの壁際に荷物を置き、外側に寝たのが間違いの元だった。気持ちの良い夢を見た。そこで勢い良く海に飛び込んだ……はずだった。が、床に落ちていた。
激痛で目を覚ましたが、そこには冷やすアイスも救急箱も無く、心細さに涙がポロポロ。しばらくして海外保険を思い出し、電話して、なんとか近くの病院にたどりついたものの、暗く不衛生な雰囲気なうえに患者がごった返していた。
しかも4時間待ちだという。費用はかかるが別の病院があることを知り、そちらに出向く。明るくて清潔な病院に安堵するが、やはり、イエローリンパ、を繰り返すしかない。それでもドクターは察したようで、ある液体をガーゼに浸し、額にあててくれた。これで治療は終わりだと言う。
ケガの場合は言葉が通じなくても、見た目でおおよその判断はしてもらえるけれど、気持ちが悪いとか、息が苦しいとか、説明しにくい病気だったら、どんなことになっていたやら。ところで、大宮エリーさんが受けた治療の中身は、いったいどんなものだったのか。
こんどこそ本物の海に飛び込めば良かった?
何年前のことか、ある年の始めに、(どうやら一人で)オーストラリアのユースホステルに宿泊したらしい。鉄パイプの二段ベッドの上段に寝た。床はコンクリート。四人部屋という相部屋なので、警戒してベッドの壁際に荷物を置き、外側に寝たのが間違いの元だった。気持ちの良い夢を見た。そこで勢い良く海に飛び込んだ……はずだった。が、床に落ちていた。
激痛で目を覚ましたが、そこには冷やすアイスも救急箱も無く、心細さに涙がポロポロ。しばらくして海外保険を思い出し、電話して、なんとか近くの病院にたどりついたものの、暗く不衛生な雰囲気なうえに患者がごった返していた。
額からは血ではなく黄色い液がデロデローンと流失していた。リンパ液だ。これを伝えねば。でも、英語でなんといっていいか分からず、「イエローリンパ、フローイング、イエローリンパ、フローイング」と繰り返した。東大でたのになんたる英語力。当然、通じない。
しかも4時間待ちだという。費用はかかるが別の病院があることを知り、そちらに出向く。明るくて清潔な病院に安堵するが、やはり、イエローリンパ、を繰り返すしかない。それでもドクターは察したようで、ある液体をガーゼに浸し、額にあててくれた。これで治療は終わりだと言う。
ケガの場合は言葉が通じなくても、見た目でおおよその判断はしてもらえるけれど、気持ちが悪いとか、息が苦しいとか、説明しにくい病気だったら、どんなことになっていたやら。ところで、大宮エリーさんが受けた治療の中身は、いったいどんなものだったのか。
おそるおそるわたしは聞いた。その小瓶の液はなんですか、と。ドクターは言った。生理食塩水だよ。し、塩水かよ!
こんどこそ本物の海に飛び込めば良かった?
2007年01月10日
裸足にシャネル
近所のおばさんから「それ良いネエ」と着ていたセーターを褒められ、「これ、貰い物なんですよ〜」と嬉しそうに話したら、「黙ってれば分らないのにぃ…ギャハハ」と笑われた。
たまに親戚から古着を貰うことがあって、とても重宝している。特にそのセーターはしっかりとしたつくりで、一度着たかどうかのうちにサイズが合わなくなってしまったとかで、こちらとしては新品を貰ったも同然だった。私としては得した気分なのだ。とても黙ってなんかいられない。
ところで、毎年流行に合わせてブランド品を買っている人は、古くなった衣類はどうしているのだろうと思っていたら、中村うさぎさんが「さすらいの女王」【週刊文春 2007年1月8日号】に書いていた。
中古のブランド品を買い取る業者を呼んで、「ひと山いくら」みたいな形で売る。業者は、それらをあとでチェックするのだけれど、シミや破れなどで再販できないものもたくさん混じっている。それらは慈善団体に寄付され、アフリカ難民などに送られることもあるそうだ。
その光景を想像しただけで、冷たく異様な絵を見たようなショックを受けてしまった。
たまに親戚から古着を貰うことがあって、とても重宝している。特にそのセーターはしっかりとしたつくりで、一度着たかどうかのうちにサイズが合わなくなってしまったとかで、こちらとしては新品を貰ったも同然だった。私としては得した気分なのだ。とても黙ってなんかいられない。
ところで、毎年流行に合わせてブランド品を買っている人は、古くなった衣類はどうしているのだろうと思っていたら、中村うさぎさんが「さすらいの女王」【週刊文春 2007年1月8日号】に書いていた。
中古のブランド品を買い取る業者を呼んで、「ひと山いくら」みたいな形で売る。業者は、それらをあとでチェックするのだけれど、シミや破れなどで再販できないものもたくさん混じっている。それらは慈善団体に寄付され、アフリカ難民などに送られることもあるそうだ。
こうしてアフリカでは、腹を空かした難民の女性がシャネルやディオールの服を着て裸足で歩いてる、みたいな不思議な光景が、日常的に見られるそうなのである。
貧富の格差がどうこう、といったことよりも、「ステイタス」という唯一無二の記号性を失ったブランド品の末路を語る寓話みたいで、この話は面白い。
その光景を想像しただけで、冷たく異様な絵を見たようなショックを受けてしまった。
