山本さんが東京駅から乗ったタクシーのドライバーは、日本全国の地図が頭に入っていると言ったという。35年間、冷凍車や大型トレーラーなどで九州から北海道まで荷物を運んでいたからだ。
住所ではピンとこなくても、市場名や会社名がわかれば、瞬時にルートが頭に描けるのだそうだ。しかも時間や天候に応じてそれらを変えられる。
京都のことでも、山本さんの郷里、高知についても淀みなく説明したというから確からしい。山本さんは、これぞプロだと感嘆している。
しかしトラックドライバーは、荷物の積み込み、積み下ろし、ルートの選択、それらがすべて報酬に関わってくる厳しい仕事だ。「タクシーがこんなに楽だとは思いもしませんでした」。
素早く目的地に着いたあとは、客が自分で乗り降りしてくれる。積荷をどうしようかと悩むことはない。「1分でも速く、十円でも安く目的地に着くのは、トラックなら当たり前以前のこと。それなのに、タクシーのお客様は喜んでくれる」
いまは天職だと、顔をほころばせた彼。違う世界で再起動をかけた彼に、幸多からんことを。
人を見る目の温かさ、締めくくりの文の心地良さ。来月からもこのエッセイを楽しみにしたい。
