2008年01月14日

江戸人だった杉浦日向子さん

 漫画家であり江戸風俗研究家であった杉浦日向子さんは、NHK『コメディー お江戸でござる』の解説をほんとうに楽しそうになさっていた。私には、日向子さんが江戸時代からタイムスリップしてきたのではないかと思えてならなかった。江戸庶民のたくましく生き生きとした生活をみなさんに知らせるために……。

 『文藝春秋』(二月特別号)の特集「ドキュメント 見事な死 ―― 阿久悠から黒澤明なで著名人52人の最期」に、杉浦さんの名前も並んでいた。実兄のカメラマン鈴木雅也氏が語っている。とても仲の良かった兄妹だったことが伝わってきた。

 日向子さんはふだんからあの笑顔のままの方だったらしい。闘病中に書かれた文章についても、お兄様はこう見ている。
 

 人間は病の容れ物。何かしら病があるのが当たり前で、それと引き換えに生きている――。生老病死を春夏秋冬のように受け入れていた江戸人の死生観に、自分を重ねるような文章が目立ちました。


 肩の力が抜けるような死生観だなあ。でも、実際に病を得てしまったとき、人はどこまでそれを受け入れられるものだろうか。日向子さんは、生きることを最後まで楽しもうとしていた。すごい人。

 病室での様子も語られてる。


 最後の頃は筆談もできず、手で指し示して意志を伝えていましたが、本来の明るさを失わず、刹那を楽しむ流儀も忘れませんでした。

 永眠する五日前の早朝、つけっぱなしにしていた病室のテレビで落語が始まると、急に「見たい」と合図をよこしたんです。ベッドを起こすと、途中でウトウトしながらも最後まで見て、満足気な顔でまた眠りについて。

 ”お江戸の先生”と観る最後の演目が、江戸前じゃなくて上方落語になるとは思わなかったけれど、朝五時半の『蜘蛛駕籠(くもかご)』は、忘れられない一席になりました。


 杉浦日向子さんは、やっぱり江戸時代に戻って行ったんじゃないかな、駕籠に乗って……。早過ぎたけど。
のり at 15:35 | Comment(0) | TrackBack(1) | 雑誌
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