椎名誠さんちの夫婦間のメールは簡潔で、五・七・五スタイルになっているそうだ。「風まかせ 赤マント」【週刊文春2009年7月23日号】に、書いてある。
冒頭のは椎名さんが「今日は家でゴハンを食べると言って出たけれど打ち合わせのあと飲みにいくのでめしを食って帰る。したがって遅くなる」ということを伝えるためのメール本文だ。これだけでちゃんと意味が通じている。件名は適当に『夕立に』などとつけるらしい。そこは御愛嬌。
妻からの返事「せっかくの トロかつおなり 明日はなし」、件名『絶品』。すごいな、この夫婦。いいな、この夫婦。
椎名さんは妄想する。会社の会議での発言も五・七・五スタイルにしたらと。
「お手元の 書類の五ページ 見てください」
「問題は このものすごい 売り上げ減」
「ああひどい 目もあてられない 前年対比」
「明日にでも 工場閉鎖 賃金カット」
「原因は 能無し社長の KY経営」
「この会議 なんで社長は 出てこない」
「注文の スーツの仮縫い 英國屋」
「もうだめだ 二代目社長と 共倒れ」
「この危機を わたしゃ何度も 言いました」
「言うだけで 何もしなけりゃ 同じこと」
「そういうが あんたはほんとの 何も専務」
「字余りが あまりにひどい バカ会議」
「殴るなら みんなでいこう 社長室」
ひゃひゃひゃ、最後の方はラップを聞いているような錯覚が…。調子が良すぎて、中身がどんどんからっぽになっていく。
五・七・五というのはどうしてこうも日本人の感覚にフィットするんだろう。読みながら心でリズムをとってしまう。
でもいざ自分で作ろうとすると気のきいた言葉が出てこない。悲しい。俳句や川柳を作りたいのに作れない。悔しいなあ。
こんなことしか浮かばない。
「五七五 短いくせに 手に余る」
………。