この頃の私はちょっとめげている。珍しく二回たて続けにテレビに出演したところ、ものすごく老けて太って映っていた。いやあれが真実の姿なのであろうが、それにしてもひど過ぎる。このところ女性誌にやたら出て、
「女は努力することが大切です」
「いくつになっても、美しさを追い求めなければならない」
などと、エラそうなことを言っていた自分が本当に恥ずかしい。このストレスでまたつい食べてしまったではないか。
また私の努力しない理由が増えてしまった。

この頃の私はちょっとめげている。珍しく二回たて続けにテレビに出演したところ、ものすごく老けて太って映っていた。いやあれが真実の姿なのであろうが、それにしてもひど過ぎる。このところ女性誌にやたら出て、
「女は努力することが大切です」
「いくつになっても、美しさを追い求めなければならない」
などと、エラそうなことを言っていた自分が本当に恥ずかしい。このストレスでまたつい食べてしまったではないか。
なんだか魔法の眼鏡を手に入れたよう。今まで見えなかったものがはっきり見えてきて、つい意地悪な気分で、チャンネルをまわしてしまうのだ。
ものすごい強いライトの光とレフ板を使い、顔をぼやかしてくれている。頬づえをついているので、顔半分も見えない仕掛け。うちの夫も、
「うまく誤魔化してるなあ」
と感心していたものだ。
駅で鏡を見て、ヒエーっと叫んだ。歯ぐきに麻酔をしていたことをすっかり忘れていたのだ。麻酔は完全に抜けきらず、私の唇は斜めになりピカソ化していたのである。
おとといもある女性誌のインタビュー写真を見て怒る私。
「何よ、これ。これじゃあ、タダの小綺麗なおばさんじゃないの」
傍にいたハタケヤマが、びっくりした声を出す。
「ハヤシさん、小綺麗なおばさんで何がいけないんですか? これ以上何を望むんですか?」
ますます腹を立てる私。
「あのね、私が望んでいるのはこんなもんじゃないのよッ。グラビア十六ページ、キレイの秘密に迫られてる私が、こんな写真じゃ困るのよッ」
こんな顔を見られて、もう何の怖いことがあろうか。くっくっとひとりで笑ってしまった。女もこのトシになるとホントにいろいろ大変です。
この絵の浮き上がり方は感動的で、寄り目をして絵を見つめていると、突然出現する。こんなことがあろうかと思うほど美しい世界が拡がっていくのである。
「ヒエー、すごい、すごい」
と大騒ぎしてすっかりはまってしまった。
このところ列車に乗って何をするかというと、遠い景色を眺める。そして自分の掌を見つめる。こういうことを繰り返す。
夫が教えてくれた。知り合いに六十五歳で、全く老眼のきざしがない人がいる。その人は車が停まる時、信号と、自分の鼻をかわるがわる見るというのを習慣にしているそうだ。
「近くと遠くを見るのがいいんだよ」
それをさっそく実行している。目は私たち作家にとっては命綱。
このあいだ二十代の人に言われた。
「林さんのように、戦後生まれの人は……」
えっ、と聞き間違えたかと思った。戦後世代だなんて、おばあさんみたいでイヤだわ。私が生まれたのなんて、ずっと後よ……。しかし考えてみると、昭和二十九年といったら、上に二の数字がつく。戦争の傷跡が残っていると思われても当然だし、事実そうだった。街でも白い着物でアコーディオンを弾いている傷痍軍人をよく見かけたものである。
「一九五四年」というラベルに、人々は驚きの声をあげる。
「半世紀前ですか。よくこんなものがありましたね」
「保管は大丈夫ですか」
「澱(おり)は溜まってないかなぁ。ちゃんと飲めるかなあ……」
これらの言葉は、すべて私につき刺さってくるようで、ついうつむいてしまう。ソムリエがコルクを抜こうとするのだが、あまりの古さにうまくいかない。
「木が固まり過ぎてるのかも」
そうね、古過ぎるもんね。
私はよく多くの人たちから質問を受ける。
「ハヤシさんって、あれだけ大量の洋服を買ってて、どうしていつも同じもの着ているの」
答えは簡単である。
@あまりのだらしなさに、クローゼットが全く機能していない。回転出来なくなったラックにぎっしりと洋服がかかり、そのハンガーの針金にまた三着ぐらい服がかかっている。題して「タコハンガー」。ニット類が層をなし、床も見えないぐらいだ。よって、手近なものばかり着ることになる。
A体重の増減が激し過ぎる。
ついこのあいだ中国ハリで五キロ痩せたと思ったら、あっという間にリバウンドしてしまった。二ヵ月前にぴったりで購入したスーツが、今はボタンがかからず、クローゼットの奥で冬眠に入った。こういうものが数知れず……。
ま、こういうわけで、いつも同じものを着ている。
ものすごい力を入れて顔を上につり上げ、次にリンパ腺に沿って流していく、というやり方だ。これをやると上がる、なんてもんじゃない。
考案者の先生のところで、この顔筋マッサージをしてもらい、ついでにメイクをしてもらった後、書評インタビュー用の写真を撮った。その写真がまるで別人のようなのだ。頬も目もきりりと上がり、顎のラインもすっきりしている。
「もういいかげんに諦めたらどうだ」と、まわりの人たちは言うけれども、決して私はそんなことはしない。
お金もさることながら、お茶屋さんに顔がきかなくては、こういうことは出来ないだろうから、彼女はふだん、京都の花街で遊んでいるに違いない。
一流どころの芸者さんというのは、大変な教養の持ち主ばかりだ。
何といおうか、政財界の人たちを相手にしている彼女たちは、どんな話題もオールマイティという感じ。
こういう誤解は多い。そばは確かにローカロリーで健康食であるが、私のように炭水化物抜きダイエットの方法をとると、摂ってはいけないものになるのだ。